X'masの約束

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今の俺にできる事はただ一つ。 10年前に誓った約束を果たす為に病室を後にした。 ベッドから動く事ができない悠人の為にクリスマスイルミネーションを病室から見えるように設置場所とデザインの変更を決めた俺は病院向かいにある丘へと向かっていた。 飾り付ける木を車のヘッドライトで照らしながら、一本一本、枝に電球やロープライトを巻きつける。 地道な作業を黙々と進める中、幼い頃の出来事をまるで昨日の事のように思い出し、悠人の笑顔が次々に浮かんでくる。 振り返ればすぐそこで悠人が笑っているような不思議な感覚は、いつしか不安に押し潰れそうになっていた俺の心を柔らかくほぐしていった。 気がつけば、ちらちらと舞い始めた雪が辺りを白く変え始め、日付は変わり24日になっていた。 10年前のクリスマスの夜を改めて思い出した俺はそっと天を仰ぎ目を閉じた。 「イエス様、もしあなたが神様なら…… サンタさん、もし本当にいるのなら…… 悠人に力を貸してください。命をかけて挑戦した悠人に、力を、奇跡を与えて下さい」 降り続ける雪がヘッドライトに照らされてキラキラと輝く星のようだった。 作り物のイルミネーションとは比べ物にならないほどに光り輝く雪は幻想的でおもわず息を飲んでいた。 なんて綺麗なんだろう…… 静寂な夜に降り注ぐ雪はキラキラと音をたてるかのように降り注ぎ優しく俺を包みこんでいた。
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