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夜通し続けた作業も暗い中では捗らず、作品として仕上がった頃には夕方となっていた。
降り続いた雪は辺り一面を銀世界に変え、その中にひっそりと佇むシンボルツリーを優しく包み込む。
病状の快復に期待しつつ悠人の病室へと足を踏み入れるも、昨日と変わらない規則的な機械音が静かな部屋に響いていた。
「悠人?お前に見てもらいたくて作ったんだ。希望のシンボルツリー」
ベッドの傍で語りかけても、やはり応答はなく、代わり響く機械音が心を締め付けた。
「もうすぐ陽が暮れるから、一緒に見ような?」
「今日はイブだぞ……日付が変わったらクリスマスだよ。
もう……い、いつまでも、寝てんなよっ! いいかげん起きてくれよ」
話しかけても静かに眠り続ける悠人の姿には変わりなく、何故かどんどん小さくなっていく気がして、知らず知らずに涙が溢れていた。
怒鳴られたあの日から泣かないって決めたはずなのに。
止める事もできないままの涙は冷たい滴となって、眠り続ける悠人の頬へと落ちた。
悔しさと情けなさと脱力感が押し寄せる。
悠人が初めて怒鳴り、泣いたあの日。
辛い現実の中で俺を気遣った悠人の優しさと強さを思い知らされたあの日から、俺は少しでも成長できたのだろうか?
大切な人が目の前にいるのに何もできない情けなさと悔しさが込み上げた。
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