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その証拠が今、アシルの手の中にあった。両手でようやく包み込めるくらいの大きさの、煌めく卵だ。
全体に宝石の粉をちりばめたかのようにきらきらと輝く卵は、いかにも特別なものであると、自ら示しているようだ。
「これで……これでもう、誰にも文句は言わせない」
歓喜の溜息とともに、愛おしそうに頬ずりをする。この卵の中の生物こそが、アシルの実力を証明するのだ。
「誰も私を見下すことなんか出来ない。そうだろう?」
そう、まだ生まれる兆しのない卵に語りかけた。うっとりと、熱の籠った瞳で見つめながら。
「そうだろう? 愛しいドラゴン……早く生まれておいで」
いっそ青味がかって見えるほど白い手に包まれ、ドラゴンの卵は沈黙する。
ちなみに仲間は今まさに模擬戦闘の最中。アシルもそれに参加して然るべきなのだが……。
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