第一章 ”金”の卵

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 アシル、と反芻してからガートルードが口を開いた。 「それがもしや、稀代の魔術士と噂されるアシル=エトナ=バルドーか?」 「……そうだ」  答えたハンクの表情は苦々しい。威力はあるのに起動出来ない兵器を持っている気分なのだろう。  形勢逆転出来る威力があるのに、どうしようもない問題でその可能性がゼロに近いのだ。 「……噂に違わずひょろっちいな」 「そうだろう」 「見るからに気が弱そうな美人だな」 「……そうだろう」  青味がかって見えるほど白い肌。細い身体。柳眉は少し垂れ下がって気の弱さを表しているよう。  長く細い睫毛が影を落とすさまは、美しさよりも儚さを助長していた。  おまけに細く柔らかく長い髪が、さらに“気弱さ”と“頼りなさ”を表しているようだ。
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