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何かに引き寄せられるように、ガルトは夢から覚めた。どんな夢だったか。もしかしたら夢など見ていなかったのかも知れないが、ともかく、意識は瞬時に冴え渡った。
(……何か、いる?)
殺意も害意もないようだが、確かに何かが部屋の中にいた。それも、このベッドの近くに。
(近い!)
「ひっ」
ばち、と目を開けたそこには、なぜか泣きそうな美人の顔があった。両手で口を覆って怯えている。
(普通ここは、目覚めた俺が悲鳴をあげるんじゃないか? ……あれ? 俺って昨日酔っぱらったっけ?)
気弱そうな美人に襲われる覚えはない。見覚えがあるようでない美人に、ガルトは取りあえず言ってみた。
「お姉さん。悪いけど俺、なんも覚えてないんだけど?」
「……っ!」
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