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美人の目がまん丸になった。驚愕している、というのが正しいだろう。そして、美人は言った。
「わ、わたしは男です! 昨日会ったじゃないですか!」
「は……?」
昨日会った、という台詞に記憶をまさぐる。昨日は模擬戦闘があったから、男女(おとこおんな)と出会うような暇はなかった筈だ。
「……だいたいここ、兵舎なんだけど?」
「まだ寝ぼけてるんですか!? わたしだって兵士ですよ!」
「……確かに禁士隊の制服着てるな。……禁士隊?」
ガルトの目が美人の服を辿った。それからゆっくりと上体を起こす。だんだん頭がはっきりしてきた。
「そうです、禁士隊のアシルです! 静寂の森で襲ってきましたよね! ね!?」
「ちょっ……ぐいぐいくんな!」
縋るように迫ってきたアシルの脳天に、ゴスッ、とガルトの拳が直撃した。
「いっ!?」
ぽろりと涙を落としてアシルが訴えたが、ガルトはすでに記憶を辿ることに集中しており、見ていない。
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