30人が本棚に入れています
本棚に追加
「……おい?」
声をかけてもすぐに反応はなかった。しばらくして、アシルは俯いたまま小さな声で主張する。
「……本当に、わたしが召喚したんです。そういう事が出来るって……証明したくて……!」
「……」
ガルトはこっそり溜息を吐く。アシルの主張は分かった。あの卵をアシルが召喚したとして、それでもあれがドラゴンの卵だとは信じ難いのだ。
それほどドラゴンを――その卵であろうと、召喚するなどという事は難しいからだ。
ちらりと窓を見やると暁の光がカーテン越しに差し込んでいた。ついでに壁掛け時計を見やれば、もう訓練開始時間が迫っている。完全に部屋を出る時間帯だ。
これ以上私的な時間は取れないとガルトは判断した。
「お前の主張は分かった」
「! それじゃあ」
「あれをお前が召喚したってのは、信じてやる」
喜んで口を開いたアシルが喋る前に、ガルトはその首根っこを掴みつつ早口に言い募った。ついでに扉へ向かう。
最初のコメントを投稿しよう!