2.惹かれていく心

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センター試験当日。 試験会場に向かう、 俺の脳裏には試験の事よりも、 雪の夜に出逢った あの人のことが気になって仕方なかった。 あれ以来、 他の病院に通院してるのか、 親父の病院には姿を見せない。 そりゃ、行きずりで 助けただけの縁。 その後も、親父の病院に完治するまで 通院しなきゃいけない理由もないけど、 それでも……逢いたいと思う気持ちは、 気になる気持ちは止められない。 俺より……多分年上なんだろう。 それは推測できるけど…… どれくらい年上なんだろうか? 背中に背負った彼女は、 とても軽くて華奢な感じがした。 そして……彼女から香、 甘い香りが鼻腔を刺激した。 センター試験を終えた帰り道。 敏感な二人の親友に、 俺は商店街の方へと連行された。 「恭也、なんかあった?  最近、集中力ないよね」 親友の一人、 鷹宮総合病院の跡取り息子である 鷹宮雄矢(たかみや ゆうや)が声をかける。 同じ医大を目指す 中学時代からの親友。 雄矢の隣には同じく親友の、 西宮寺勇生(さいぐうじ ゆうき)が 覗き込む。 勇生の父親もまた、 大学病院で心臓外科医をしていて、 母親は親父の病院の看護師。 そんな背景もあって ガキの頃からの腐れ縁。 「別に」 「恭也がそうやって言うときは  なんかあった時だよ。  勇生もなんか言えよ」 「雄矢の言う通り  白状したら?  恭也らしからぬ  ため息は、  見逃せないかな」 「そうそう。  ほら、センター試験  終わった直後だし  今日くらい、  羽伸ばしてもいんじゃない?  本番前の羽休め。    勇生、恭也連行して  食事でもしようよ」 商店街ではセールやら、 福袋の残ったものが 安くなって並べられてる。 そんな商店街を ブラブラしながら、 三人で買い物兼 目的のファーストフードのお店へと 入っていく。 それぞれが 飲み物と食べるものを注文して 窓際のテーブルに座り込むと ゆっくりと 取り調べにも 似た時間が訪れる。 「それで、  原因は?」 「白状する  気になった?」
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