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悪戯っ子にも似た
表情を浮かべて
覗き込むように
自分の飲み物に口をつけながら
突きつけられる言葉。
「白状ってなんだよ。
別になんでもないって。
ただ、センター試験の前にさ、
女と出会ったんだよ。
坂から滑らせて
捻挫しててさ、
キツそうだったからさ、
家まで連れ帰ったんだよ。
親父に
診てもらおうと思ってさ」
話し始めると、
雄矢も勇生も
二人して
飲むのをやめて
真剣な様子。
「恭也……
十分にあったんじゃん」
半ば、あきれ気味に
言葉をこぼす雄矢。
「雄矢、
恭也だからさ。
仕方ないよ。
それで……その人は、
どこの学校の人?」
勇生の
興味津々の言葉に
「多分……社会人」と
小さく答えた。
「うわぁ、社会人かぁー。
どれくらい年上なの?」
「わかんねぇー。
ただ……、
足、大丈夫かなって」
思うままに、
小さく呟いた言葉に
再び、勇生が反応した。
「恭也、それ本当に
足だけ?
その人が気になって
会いたいんじゃなくて?」
それだけ?
勇生の言葉に
思わずすぐに
言い返すことが出来ない。
恋と言うには
あまりにも未熟で
短すぎて。
「一目惚れってヤツ?」
雄矢が
逆サイドから
話に入ってくる。
世の中には、
一目惚れって
言葉は確かにあるけど
その一言で
片づける気もしなくて。
「まだ良くわかんない。
あったばっかだから。
だけど、
また会いたい……かな」
そう。
また会いたい。
相手は俺よりも年上で
俺が出来ることなんて
少ないと思うけど
傍にいて、
守ってやりたいって
一晩、ベッドサイドで
話してる間に思った。
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