続編

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その夜。 同じベッドに入る、琉生とユキ。 琉生は、ユキを抱き締める。 ユキ「どうしたの?」 琉生「どうもしない。 ただ、どうしようもなく、幸せなんだ」 ユキは微笑む。 ユキ「そうだね。私も」 潤んだユキの瞳に見つめられ、琉生は自分の手でユキの目を閉じた。 琉生「そんな目で見るな」 ユキ「?」 琉生「めまいがするよ…」 琉生は、そのまま、ユキにキスをした。 そして、ユキのお腹の傷に触れる。 琉生「痛むか?」 ユキ「ううん。引きつれる感じだけ」 琉生「いぶきが産まれたのは嬉しいが、ユキの身体に、消えない傷が付いてしまったのは…」 ユキ「これは証だよ」 琉生「証?」 ユキ「愛を貫いた、その証。 私は、昔、身体を売ってたし 琉生から離れようともしたし いぶきを諦めようともした。 けど、いつも琉生が助けてくれたでしょ? 私は、琉生をただ信じた。 確かに、消えない跡だけど これは、私たちが諦めないで、信じあった証なんだと思うの。 そう思うとね、私の身体に刻まれた、この跡も愛しい」 ユキは、お腹の傷に触れる琉生の手に、自分の手を重ねた。 琉生「そうか」 琉生は微笑んで、ユキの唇、耳、首筋にと、キスを落としていく。 琉生の唇が触れただけで、身体が熱くなる。 ユキ「琉生。駄目だって。まだ…。 先生がいいって言うまで…」 琉生「分かってる… あぁ、くそっ!」 琉生は、ユキから手を離し、天井を仰ぐ。 琉生「次の検診に一緒に行く」 ユキ「え?」 琉生「脅してでも、いいって言わせないと」 ユキは笑う。 琉生「こっちの身がもたないさ」 琉生も微笑むと、またユキを抱き締めた。 きっとまたすぐに、いぶきが目を覚ます。 それまで、二人きりの時間を。 きっと ゆっくり、二人きりの時間なんて、もう しばらくないと思うから。 このささやかな時間を大切にしていこう。 いつか いぶきが 愛する誰かと、永遠を誓う日まで。 三人の時間と同じくらい、二人のささやかな時間も 大切にしていこうね。 完
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