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翌日。
ユキは手元の航空券を見ながら、溜め息をつく。
月島や奏、榊はチェックアウトの時間もあり、観光がてら、早く出ると言って、もうすでに旅館を後にした。
まだ仲居姿のユキは再び溜め息をつく。
頭の中で、出発間際にユキに言った、奏の言葉が蘇る。
「必ず来い。あいつは馬鹿みてぇに信じてる」
今日の午後
月島たちは、この北海道を発つ。
ユキの瞳から、涙が溢れる。
一番最初に会った時の表情のない琉生
会社のトラブルに見舞われた琉生
社員に襲われそうになって、助けてくれた琉生
パーティー会場での琉生
まかない丼をがっつく琉生
ボロボロになった私を、ホテルまで探しに来てくれた琉生
私が熱を出して、看病してくれた琉生
お兄ちゃんが亡くなって、抱き締め続けてくれた琉生
北海道まで迎えに来てくれた琉生
自分が刺されても、私を守ろうとしてくれた
ユキ「琉生、琉生…」
ユキは泣き崩れる。
ユキ「琉生…琉生…」
優しく抱いてくれた夜
琉生の息づかい
私を見る、まっすぐな瞳
ユキは、航空券を胸に、泣き続けた。
ユキ「ごめんね…ごめんね、琉生」
やっぱり、私は行けない。
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