最終章

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ユキ… 月島は目を閉じる。 ユキ… 初めて会った時の、ふてくされたような表情。 夜中、出て行く時の泣き出しそうな後ろ姿。 止めると、冷たく心を閉ざした。 パーティーで、他人の粗相を被ろうとした。 会社のトラブルの時、「凍結を」と囁いた。 ボロボロになったユキを支えた時、ユキの傷の深さを知った。 全てが、兄のためだったと分かった時、本当のユキが見えたんだ。 あの丼を美味しそうに食べてたユキ。 共有したいと思ったんだ。 ユキが美味しいと思うもの… 悲しいと思うもの… 全てを。 だから、泣き叫ぶユキを抱き締め続けた。 ユキの痛みが自分に移ればいいと。 そして、ユキがいなくなって… やっと気付いたんだ。 他人の事を心配することも 他人の事を想うことも 誰かと何かを共有することも たった誰か一人を愛することも 知らなかったんだ。 全部、ユキが教えてくれた。 ユキ…。 耐えられない。 ユキ…。 お願いだ。 傍にいてくれ…。 月島は、自分の目に手を当てて、うつむいた。 奏「くそっ…」 そんな月島を見て、奏が悔しそうに呟いた。 .
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