続編

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ユキは、その指をかわすと、英一と向き合う。 ユキ「私は純粋に、琉生を愛してます。 …確かに、琉生はお金持ちですが、それは愛した人が、たまたまお金持ちだっただけです」 英一「金はいらないと?」 ユキ「はい」 英一「地位も?」 ユキ「いりません」 英一「権力にも屈しない、か」 ユキ「琉生を愛するためには、屈しません」 英一は、不敵な笑みを浮かべる。 英一「ご主人様から、命令だ。付いて来い」 英一に付いて行った先は、英一の部屋だった。 ユキも初めて入る部屋だ。 キングベッドが置いてあり、立派な机と椅子がある。 戸棚の中には、ウィスキーのボトルとグラスがキラキラしている。 英一「ベッドへ」 ユキは止まる。 ユキ「旦那さま。それだけは、お許し下さい…他のことでしたら、何でも…」 英一「何を勘違いしている?」 ユキ「え…?」 英一「ベッドの上に、埃が落ちてる。 きれいにしてくれ」 ユキは、ほっとした表情で頭を下げる。 ユキ「失礼致しました」 ユキは、ベッドの上を確認しようと、身を乗り出す。 英一「私のベッドに少しでも乗るなら、エプロンを外したまえ。汚れが付いたら、どうするんだ」 ユキ「失礼致しました」 ユキはエプロンを外すと、ベッドに乗る。 英一「埃があったら、見せてくれ。 どこから落ちたものか、知りたい」 ユキ「かしこまりました」 英一は、潔癖なところがある。 小さな埃ひとつ許せない人だった。 そして、真っ白なシーツの上に、埃はあった。 ユキ「旦那さま、ございました」 英一「どこだ?」 ユキ「こちらです。ご覧になりますか?」 英一「ああ」 ユキは、英一をベッドに招く。 英一「ただの埃か…」 ユキ「はい。クリーニングにお出しします」 英一「ああ、そうしてくれ」 それだけ言うと、英一は部屋を出て行った。 塵ひとつ、埃ひとつ許せない英一に、ユキは静かに溜め息をついた。 .
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