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メイドとして働くことを、よく思っていない琉生と話がしたかったが、琉生は仕事に追われ、朝は早く、夜は遅かった。
メイドとして、朝、お見送りし、ユキが寝た頃に帰って来る。
そんな生活が続いていた。
ユキ「避けられてる、のかな…」
そんな不安が胸に渦巻いて、ユキは視線を落とす。
そして、今夜も一人でベッドに入る。
うとうとと、まどろんだ頃、ベッドが軋む。
ユキ「ん…」
ユキは、うっすらと目を開ける。
琉生「起こしたか?」
ユキ「ううん…。お帰り」
琉生は、ユキのベッドに潜り込むと、ユキを背中から抱き締めた。
琉生からは、シャンプーのいい香りがした。
…明日、浴室の掃除しなきゃな…
琉生が入った後は、浴槽の栓も抜かないし…
換気扇もしないし…
きっと、びしょびしょだわ…
そんな風に思いながら、ユキは再び目を閉じた。
翌朝、目覚めると、琉生はすでにいなかった。
ユキ「もう行ったんだ…」
ユキは、昨夜の琉生が抱き締めてくれた、自分の肩を撫でた。
ユキ「お湯の栓、抜かなきゃ…」
ユキは身支度を整えると、バスルームへ向かう。
湿気に満ちたバスルームを想像しながらドアを開けたユキは拍子抜けしてしまう。
お湯の栓も抜かれ
換気扇も回っていた。
と言うより
使われた形跡がない。
シャンプーの位置も、ボディタオルの位置も、ユキが最後に掃除した時のままだった。
ユキは立ち尽くす。
じゃあ、昨日の…あのシャンプーの香りは?
琉生のシャンプーの香りを思い出す。
ユキは、バスルームに置いてある、琉生のシャンプーに鼻を近付ける。
…昨日と違う香り。
胸が、ざわつく。
そんなわけないから。
何があっても、琉生を信じる。
別に、外でお風呂に入って来たって、何の問題もないんだし。
避けられてる気がしてたのだって、気のせいよ。
昨夜は抱き締めてくれたんだし。
仕事が忙しくて、あまり会話がないから、すぐに不安になっちゃうんだわ。
今日は、琉生の帰りをちゃんと待ってよう。
どんなに遅くても。
その時、インターフォンが鳴る。
ユキ「はーい!」
「クリーニングです。仕上がりましたので、お届けにあがりました!」
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