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月島「状況の分かる者は?」
「はい。
今朝、出勤した、うちのスタッフがパソコンを起動させたところ、何者かが外部から、進入してきた形跡があり、セキュリティを確認したところ、解除されており、顧客情報が漏れていることに気付きました」
月島「何者だ?」
「パソコンの足取りから、追跡してますが、分かりません」
月島「どれくらいの個人情報が流れた?」
「正確な数はまだ…。しかし、5万件はくだらないかと…」
重役たちの口から、溜め息が漏れる。
月島の顔色も優れない。
ユキは、飲み物を置いていく。
ある重役の前にコーヒーを置くと、ユキに目を合わせてくる。
「ありがとう」
ユキ「いえ」
ユキは、営業スマイルを返した。
月島「とにかく、顧客への連絡と謝罪だな…」
「我々で、収集つくでしょうか?」
月島「重役が出て行けば、大丈夫だろう」
「提訴される可能性も…」
月島「担当弁護士に任せて、警察へ通報もしよう」
「一回、システムを凍結させますか?」
「そんなことしたら、凍結中の損害は…」
「社長!どうします!?」
月島は、悩んでいた。
ユキは最後に、月島の前にコーヒーを置く。
そして、囁いた。
ユキ「凍結を」
月島にしか聞こえない声だった。
月島は、驚いたようにユキを見る。
月島「お前…」
ユキは、静かに微笑んだ。
月島は、しばらくユキの横顔を見ていたが、呟いた。
月島「面白い。賭けてみるのも悪くない」
「社長?」
月島は、重役たちに向き直る。
月島「凍結させるぞ」
「社長!?」
月島「とにかく、飯を食ってからだ。
ユキ、どんどん持って来い」
ユキ「かしこまりました」
全システムを凍結させた、月島の会社は一時的に全ての収入が途絶えた。
それどころか、賠償を請求してくる子会社も出て来た。
月島は、疲れ果てた様子で、食事もあまり摂らなくなった。
ユキは、そんな月島を見ていた。
そして、今夜も月島の前に夕食が出される。
ユキ「とにかく、お食べ下さい」
営業スマイルのユキに、月島は溜め息をつく。
月島「いらん」
ユキ「お食べになるまで、下げません」
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