続編

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しかし 琉生は帰って来なかった。 それも、何日も。 ユキは、英一に仕え続けていたが、必要最低限の言葉しか交わさず、笑顔も見せなかった。 ユキにとって、月島邸に残ることはツラかった。 でも、逃げ出したくはなかったし 何より、ここにいれば きっと、琉生に会える。 ユキは、厨房の片隅で、まかないを目の前にして項垂れる。 食欲なんかない。 何だか、ずっと気持ち悪くて ストレスが胃を悪くするって、本当だわ。 すると、目の前に梅茶が置かれる。 顔を上げると、月島邸お抱えの執事の、高野直輝だった。 直輝「梅には、消化吸収を助ける働きがある」 ユキ「ありがと…」 直輝「きっと、そのうち帰って来る。心配するな」 ユキ「うん…」 直輝「続くようなら、病院行け」 ユキ「大丈夫!梅茶で治す!」 ユキは、わざと明るく、梅茶の入った湯飲みを持ち上げた。 直輝は、少し笑いながら、梅の補充をしとくか…と呟いた。 しかし、それからも、ユキの食欲は戻らず、体重も減っていく。 体重が減り、顔色も優れないことも、しばしばだった。 直輝「少し休め」 ユキ「大丈夫。片付けちゃう」 英一の夕食後の片付けをしながら、ユキは微笑んだ。 ユキ「よいしょっと」 お盆に、空いたお皿を乗せて持ち上げる。 ユキ「…っ!」 ひどい、めまいに襲われて、ユキは目を閉じる。 落としちゃ駄目! そう思った時、背中に温かさを感じ、お盆を持っていた手が軽くなる。 この感触!! ユキ「琉生!」 ユキは目を開けた。 直輝「だから、休んでろと言っただろ」 直輝はユキの背中を支えながら、片手でお盆を持っていた。 思いの外、顔が近くて、ユキは離れる。 ユキ「ごめん。やっぱり休む…」 直輝「そうしろ。後は、やっておく」 ユキは、ダイニングルームを出て、フラフラ歩いて、自分の部屋に向かった。 .
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