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メイン料理の頃には、ユキの体調はさらに悪くなっていた。
めまいに、吐き気に、冷や汗が首筋を伝う。
それでも、ユキは空いたグラスにシャンパンを注いでいく。
そして、琉生の手元のグラスにも、シャンパンを注ぐ。
琉生は、ふと視界に入ったユキの手が細かく震えているのに気付いた。
琉生は顔を上げて、ユキを見る。
ユキの額、首筋に汗が滲んでいる。
琉生「お前…」
その時、ユキの頼りない手から、直輝がシャンパンを取る。
そして、他のグラスにも注いでいった。
ユキの身体が、ぐらりと揺らぐ。
ガタン!
大きな音がして、琉生が立ち上がる。
直輝は、ユキの背中を支えて、ユキの耳元で何かを囁いた。
ユキは小さく頷くと、厨房に去った。
英一「琉生、どうした?突然立ったりして」
希保も不思議そうな表情で琉生を見る。
琉生「いや…」
琉生は、座って、シャンパンを煽る。
直輝「そろそろ、お水に致しますか?」
琉生「いや、シャンパンでいい。
ユキは…具合が悪いのか?」
直輝は、鼻先で小さく笑う。
そして、感情のない言葉を返した。
直輝「琉生様のご心配と致すところではございません」
しかし、その後、ユキが夕食に現れることはなかった。
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