続編

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ユキが夕食に現れなくなってから、琉生は上の空になる。 ダイニングルームには、英一と希保の笑い声だけが響く。 琉生「医者は呼んだのか?」 英一と希保が楽しく話している時に、琉生は直輝に聞いてきた。 直輝「いちメイドのために、お医者さまをお呼び立てするなど、とんでもございません」 琉生「しかし」 直輝「ユキは、自分で通院致しております」 琉生「通院!?どうした?どこが悪い?」 直輝「琉生様。希保様のご相手を」 琉生は額に手を当てて、溜め息をついた。 そして、さりげなく、会話に加わった。 英一「そうだ、希保さん!今日は泊まっていったらどうかね? 琉生の部屋は広いから、二人でも充分だと思うが」 琉生は、笑顔でかわす。 琉生「まだ、結婚前だろ。 間違いがあっても困る」 直輝は鼻で笑う。 間違い、ねぇ…。 食後のコーヒーを飲んでいると、赤い顔した英一は立ち上がる。 英一「少し、飲み過ぎたようだ。私は先に休ませてもらうよ」 英一は、自分の部屋に戻って行った。 希保は、窓の外を見る。 希保「素敵なバルコニーね!外に出て、お茶しましょうよ」 琉生「あぁ…」 二人はバルコニーに出て、食後のコーヒーを飲む。 潤んだ瞳の希保が琉生を見つめる。 琉生も、作り笑顔で見つめ返す。 琉生が見つめ返した視界の端に、ユキの部屋とバルコニーが見えた。 バルコニーで、夜空を見上げる、ユキの姿が写る。 ユキは、まるで星を掴もうとするかのように、夜空に手を伸ばした。 その瞬間、ユキは自分の額に手を当てると、うずくまり、見えなくなってしまった。 琉生は立ち上がる。 希保「どうしたの?」 希保は、琉生の視線を追うが、何も写らない。 琉生は、かろうじて平静を装って答えた。 琉生「いや…。今日はもう休もうと思って。 明日は大事な会議があるんだ」 希保「そう…」 希保も立ち上がる。 そして、おもむろに、琉生の袖を掴む。 希保「今夜…琉生の部屋に行っていい?」 琉生は、希保の手を押さえる。 琉生「また今度。おやすみ」 そして、琉生は出て行った。 .
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