続編

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琉生は、バルコニーを出てから、溜め息をつく。 今のユキの額を押さえながら、崩れた姿が甦る。 倒れたのか? 琉生は、ユキの部屋へと向かう。 バルコニーで? まだ肌寒い。 そんなに具合が悪いのか? 琉生は速歩きになっていく。 夕食中のユキの冷や汗。 震えていた手。 琉生は、走り出していた。 ユキの部屋の扉が見えて来た時、少し先の通路から直輝が、ゆっくりと現れた。 琉生は構わずに通ろうとするが、直輝はユキの部屋へと続く通路の真ん中で止まる。 直輝「琉生様」 琉生「何だ?端に寄れ」 直輝「どちらへ行かれるのですか?」 琉生「お前には関係ない」 直輝「この先には、メイドの控え室しかございません」 琉生「だったら何だ?」 直輝「宝生様を拒んでおきながら、メイドの部屋に行かれるのですか?」 琉生「!」 直輝「誤解を招くようなことは、お控え頂いた方が宜しいかと」 琉生「希保とは別に…」 直輝「おかしいですね。 琉生様が、お決めになったんですよね? 宝生様を妻にすると。 ユキを傷付けてまでして」 琉生は、直輝から視線を反らしていたが、驚いた表情で直輝を見た。 琉生「まさか、お前、ユキを…?」 直輝「琉生様。今となっては、琉生様が関与するところではございません」 直輝も琉生を見る。 直輝「しかし、例えば、琉生様の憶測通りだったとして…。 月島家の御曹司様と、宝生家のご令嬢。 いち執事と、いちメイド。 身分相応で相応しいと思いませんか?」 琉生「お前…」 直輝「失礼致します」 直輝は冷やかな表情で頭を下げると、ユキの部屋に入って行った。 琉生は、しばらく動けずに立ち尽くしていた。 .
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