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蒼井に、胸ぐらを突き放され、琉生は尻餅をつく。
琉生「嘘だ…」
蒼井「珍しい奴だよ、お前は。
あえて、信じたくない方を信じるんだから」
琉生「俺は…」
蒼井「そのお陰で、大事な事と、大事な人を失った。
カッコ悪すぎ」
その時、書斎に掃除用具を手にしたユキが入って来た。
琉生を見下ろす蒼井と、尻餅をつく琉生を交互に見た。
そして、殴られた琉生の頬が赤くなっているのに気付く。
ユキ「大丈夫ですか!?」
ユキは、掃除用具を置くと、琉生に駆け寄る。
琉生「気にするな。
こいつが、俺のことを親友だと言うくせに、俺を殴ったんだ」
蒼井「それは、誤解だな~。
親友だから、殴ったんだよ」
琉生は蒼井を見て、少し笑った。
蒼井「じゃ、僕帰ろっかな!」
ユキ「え?そんな…。
今、お茶をお持ちします!」
帰らないで、とでも訴えかけるようなユキの目に、蒼井は微笑んだ。
蒼井「大丈夫だよ」
蒼井は、ユキの肩をポンポンと叩くと、出て行った。
蒼井が出て行った後は、沈黙が流れる。
ユキ「頬を冷した方が宜しいかと…。
ただ今、お持ちします」
琉生は顔を合わせないように、下を向いて出て行こうとするユキの前に立つ。
行く手を阻まれたユキは止まるしかなかった。
琉生「…俺が馬鹿だった」
ユキ「…そんなことはありません」
見上げた先に、琉生の瞳。
ユキは、再び視線を床に戻す。
ユキ「とにかく、冷した方が…」
ドアノブに手をかけようとすると、その手を琉生に掴まれる。
琉生「行くな」
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