続編

34/92
前へ
/207ページ
次へ
月に手は届かない。 こうして、かざすと、手のひらにすっぽり納まるのに、決して触れることは出来ない。 でも、星なら…? 星なら、掴めるかな。 星なら、降って来るかもしれない。 それを手のひらに… ユキは、一人、ハンモックに揺られながら、星に手を伸ばす。 やっぱり、無理か。 ユキは、手を下ろしながら笑う。 ユキ「無理ね」 琉生「何が?」 急に声がして、ユキは身体を固くする。 琉生は、バルコニーの入口に立っていた。 ユキは慌てて、ハンモックから降りる。 ユキ「琉生様。こんな所に、いかがなさいました?」 琉生「探したのに、何故、逃げる?」 ユキは、目を伏せる。 ユキ「申し訳あり…」 琉生「宝生希保とは、結婚しない」 ユキ「え…?」 琉生「もう後悔はしたくない。 ユキ。お前を愛してることから、俺はもう逃げない。 だから、もう一度、心を開いてくれないか?」 ユキ「そんな…」 琉生「俺がバカだったんだ」 ユキ「駄目です」 琉生「何故だ?」 ユキ「宝生様には、何て仰るつもりですか?」 琉生「謝罪はする…」 琉生は、ユキの手を取る。 ユキは、琉生の手を押さえながら言った。 ユキ「駄目です。 自分の言ったお言葉に、責任を持って下さい。 むやみに、女性を傷付けるのは罪です」 琉生「じゃあ、どうしろと言うんだ。 好きでもない相手に、好きだと一生嘘をつき続けろとでも?」 ユキは、琉生の目を真っ直ぐに見て答えた。 ユキ「そうです」 琉生「そんなこと出来るか」 ユキ「でも… でも、そうしようと思ったんですよね? だったら…」 続きを言おうとして、ユキは突然の吐き気を覚える。 ユキは、とっさに口を押さえた。 .
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加