トラブル

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ユキ「ったく!」 その夜、仕事終わりに、ユキは厨房の隅で、自分で作った海鮮系のまかない丼を食べていた。 ユキ「どんだけ、お子ちゃまなんだっつーんだよ!」 ユキは、食べさせてあげた時の月島の勝ち誇った顔が忘れられないでいた。 ユキ「マザコン男!」 前菜で使い残ったタコやマグロ、白身魚などに、生野菜やオクラを乗せて、味を整えただけのものだった。 ユキは、怒り任せに、ぐちゃぐちゃとかき混ぜる。 月島「随分、荒れてるじゃないか」 ユキ「!?」 怒りの元凶の声に、ユキは振り返る。 そして、営業スマイルを向ける。 ユキ「ご主人様。このような場所に如何なさいました?」 月島は、身の変わりの早さに苦笑いする。 月島「お前、いくつの女を演じられるんだよ?」 ユキは鼻で笑うと、まかない丼を食べ続けた。 ユキ「男が望む女のキャラ数だけ。ってとこ?」 月島は、ユキの前に座る。 月島「じゃあ、どれが本当のお前だ?」 ユキ「一番悪い奴」 月島「違いない」 月島は、ふとユキの食べているものを見る。 月島「何だ、その汚い食い物は?」 ユキ「金持ちって、可哀想。 何でも値段だし、何でも見た目。 人生どれだけ損してるか知らない」 月島は、ユキから、スプーンを奪い取ると、まかない丼を一口食べる。 ユキ「ちょっと!返してよ。私の貴重な食事よ!」 月島「!!」 月島は、驚いた表情をする。 月島「俺に、同じものを作れ」 ユキ「やめてよ。時間外よ」 月島「いくらでも払ってやる」 ユキ「5万」 月島「いいだろう」 ユキ「金持ちって、ホント馬鹿」 ユキは立ち上がると、同じものを作り始めた。 .
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