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琉生「悪いな、蒼井。
仕事が見つかるまで、しばらくゆっくりさせてもらうよ」
蒼井「は?何言ってんだ、お前。
ゆっくりなんかさせるか。
お前の仕事は、もう決まってんだよ」
琉生「え?」
蒼井「お前、うちの経理やれ。
拒否権はないからな。
別荘、使わせてやるんだから」
蒼井は、ユキを見る。
蒼井「経理なら、家でも出来るしさ、ユキちゃん、不安定な時期だから、傍にいてあげれるだろ?」
ユキ「蒼井さん…。ありがとうございます」
蒼井「これでやっと、お前の上に立てたよ。
その偉そうな態度、ずっと鼻についてたんだ」
蒼井は笑いながら、自分の鼻をつまんだ。
琉生も笑う。
琉生「言ってろ。すぐに見返してやるさ」
蒼井に連れられた別荘は、大きなコテージのような、木で出来た家だった。
ユキ「新築の香り…」
蒼井「いや、でも1年は経つかな~。
まだ誰も使ってないからさ」
家中を見てきた琉生は、満足そうに言う。
琉生「寝室のベッド、キングベッドなんだな。
ユキ、一緒に寝られるぞ」
蒼井「寝かせるわけないだろ。
経理の仕事が山積みだ」
琉生「鬼か、お前は」
蒼井「はあ?
こんなに、至れり尽くせりなのに、恩知らずめ」
ユキ「ふふふ…。あははは!」
こらえきれずに笑い出したユキを、蒼井と琉生は見る。
ユキ「ごめんなさい。本当に仲いいんだなって」
蒼井「やめてよー、ユキちゃん。仲いいなんて」
琉生「本当だ。喧嘩が絶えない」
蒼井「でも、いいじゃん」
琉生「何が?」
蒼井「いいスタートだ。
今のユキちゃんの笑い声から始めればいい。
二人プラスもう一人で」
琉生「そうだな。
久しぶりに、ユキの笑ったところを見たかもな」
三人は、顔を見合って笑った。
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