続編

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琉生は、ユキを掴もうとするが、ユキは、その手をすり抜ける。 琉生「また逃げられた」 ユキ「馬鹿なこと言ってないで、さっさと仕事に行って」 琉生は、椅子から降りて、背伸びをする。 琉生「仕方ない。行って来るか。 蒼井め。あいつに会ったら、ただじゃおかないからな」 琉生は手早く支度すると、書類を手に出て行った。 琉生を見送り、姿が見えなくなると、ユキはトイレへ駆け込む。 まだまだ続きそうな吐き気と、めまいと動悸。 妊娠がこんなに大変だなんて思わなかった。 琉生は心配性だから、琉生の前では、ギリギリまで平気な顔をしていたい。 苦しむ姿なんて、見せたくない。 ユキは、トイレの水を流すと、立ち上がった。 家中の窓を開けよう。 一階の大きな窓を開けて、広いバルコニーに出て、ユキは笑う。 そこには ハンモックが設置されていた。 ご丁寧に、踏み台付き。 ユキは、足元に注意しながら、そっとハンモックに乗る。 ハンモックに転がると、高い木々の間から、青空がそこだけ抜けるように広がっていた。 心地いい風が吹いて、木の葉が揺れる。 ユキ「なんて、いいとこなの」 確かに、街へ出るには、時間がかかるが、まるで森の中に住んでいるような気持ち良さだった。 時々、気持ち悪くなって、ご飯を作るには時間がかかる。 今日は、早めに夕食の支度をしよう。 確か、来る途中にスーパーがあったはず…。 ユキは少し休んでから、買い物に出掛けた。 ユキ「よいしょっと…。 ちょっと買いすぎたかな」 ユキは、自分のお腹を撫でる。 まだまだ、ぺたんこのお腹でも、中には確かに琉生の赤ちゃんがいる。 そう思うだけで、幸せだった。 今日は、二人のスタートのお祝いをしよう。 琉生のために、重たかったけど、ワインも買った。 メニューは、サラダにローストビーフ。 それに、チキンのチーズ焼き。 デザートはシフォンケーキを焼く。 ユキ「あ、スープも作ろっかな!」 ユキは、いつもの倍以上の時間をかけて、作り上げた。 ユキが夕食を作り終えて、ひと休みしていると、琉生が帰って来る。 琉生「ただいま」 ユキ「おかえり」 .
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