続編

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琉生は、今か今かと時計を見ては、10分間隔になるのを待った。 そして 琉生「よし、10分間隔になった! ユキ、病院に行こう」 ユキ「…うん」 陣痛が弱まったタイミングで、ユキは立つ。 琉生は、ユキを横抱きに抱き上げた。 ユキ「大丈夫、だよ…」 琉生「ダメだ。 俺には、これくらいしか出来ないんだから」 琉生は、ユキを抱えたまま、家の外に出る。 そして、思わず足を止めた。 ユキ「雪…」 二人で、夜空を見上げた。 音もなく、静かに舞い落ちる雪は、ユキの髪を白くする。 琉生とユキは見つめ合って、微笑んだ。 琉生「行こう」 ユキ「うん」 陣痛の合間にユキは呟く。 「今は12月23日…の23時…。 クリスマスに産みたかったな…」 琉生「イブで充分だろ」 ユキ「まあ、ね」 琉生「頼むから、早く生んでくれ。 苦しむユキを見てられない」 ユキ「これから、立ち合うのに、今からそんなんで大丈夫?」 琉生「さあな」 ユキ「でも、この痛み…嬉しい」 琉生「嬉しい?」 チラッと、ユキを見ると、シートを倒した助手席で、ユキの目から涙が一筋流れていた。 ユキ「だって…、もう少しで会える。 琉生と私の赤ちゃんを、抱き締められる。 それを思ったら、こんな痛みなど…」 窓の外の雪に視線を移しながら、ユキは再びやってきた、陣痛の波に耐える。 ユキ「っ!」 そして、その波が落ち着いた頃、病院に着いた。 病院の中に入ると、何故か蒼井がいる。 琉生「何で、お前が…」 蒼井「ユキちゃん、もうすぐだよ!頑張ってね」 蒼井は、ユキの頭を撫でた。 琉生「人の妻に気安く触るな」 蒼井「何だよ~、応援してるだけだろ」 ユキ「っ!」 陣痛の間隔が更に短くなって来たユキは、琉生と共に分娩室に通された。 心電図モニターを付けられ、お腹にはベルトでドプラーが付けられた。 分娩室に、赤ちゃんの心音が響く。 速くて、力強い、赤ちゃんの心音。 医師は内診する。 医師「…う~ん。陣痛の強さはいいが、全然開いてないなぁ」 琉生「開いてない?」 医師「まだまだ赤ちゃんは出て来れないぞ。 これは長期戦だな」 .
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