続編

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診察室に通された、琉生と蒼井。 医師は真剣な表情で口を開いた。 「母体も、胎児も、もう限界です」 蒼井「限界?」 琉生には察しがついた。 こんな長時間、痛みに耐えてきたんだ。 あの様子じゃ、限界と言われても理解出来る。 琉生「それで…?」 医師「帝王切開に踏み切ろうと思います」 琉生「帝王切開…」 医師「ようは、腹壁を切って、赤ちゃんを取り出すんです」 少しの沈黙の後、琉生は口を開く。 琉生「それしか方法がないのなら…」 医師「ただ…」 蒼井「ただ?」 医師「これは、帝王切開を受ける方、全員にお話をさせて頂いてることですが」 琉生と蒼井は、次の言葉を待つ。 医師「母子共に助けられるとは限りません。 これは手術です。 麻酔も使うし、何が起こるか分かりません。 しかも、月島さんの場合、母子共に今、体力の限界です。 手術に耐えてくれるかが一番のネックです」 琉生は、下唇を噛む。 医師「我々も全力を尽くしますが、万が一の場合、母親か子供か選択しなければならない場合もあります。 酷な質問ですが… その時、どちらを優先しますか?」 琉生は、両手で顔を覆う。 琉生「どちらかを選ぶなんて出来るわけない! どっちも助けてくれ!」 医師「…お気持ちは、お察ししますが、選ばなければならない事態も起こりえるんです。 その時に、結論が出ていなければ、どちらも助けてあげられなくなるんです」 琉生「…でも、決められない」 真剣な表情で話を聞いていた蒼井が口を開く。 蒼井「決めるんだよ、琉生。 お前、一家の大黒柱なんだぞ」 琉生「!」 .
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