続編

74/92

74人が本棚に入れています
本棚に追加
/207ページ
待合室で、琉生は頭を抱える。 不安でどうしようもない。 ユキは、赤ん坊を優先しろと言ったが …出来なかった。 出来なかったんだ。 ユキなしでは、生きていけない。 でも、ユキは… 赤ん坊を亡くしたら きっと生きていけないんだろう。 もし、本当に 万が一のことが起こって ユキを優先させたと知ったら すごく傷付くんだろう。 俺を恨むんだろう。 どんな制裁でも受ける。 俺を一生、恨んでもいい。 だけど、万が一の時は、 俺の一生をかけて、ユキを抱き締め続ける。 支え続ける。 癒し続ける。 その覚悟で、ユキを優先した。 目の前のテーブルに、缶コーヒーが置かれる。 蒼井「僕の奢りだよ」 琉生「あぁ」 蒼井は、自分のコーヒーを開けながら、琉生の隣に座る。 蒼井「ユキちゃん、強いね」 琉生「あぁ。誰も彼女には勝てない」 蒼井「だから、きっと、赤ちゃんも強いね」 琉生「あぁ…」 どんなに待っても、赤ん坊の泣き声が聞こえない。 琉生は、頭を抱えながら、ユキを想う。 こんな時だからこそ 傍にいてやりたいのに。 医者と助産師に囲まれて 自分の腹を切られると分かってて 不安に違いない。 傍にいて、手を握って 大丈夫だと 何も心配しなくていいと 言ってやりたいのに。 琉生は、ユキを想いながら、自分の手を握る。 蒼井「ユキちゃんは強い」 蒼井が繰り返した。 琉生「頭を冷やして来る…」 琉生は立ち上がると、病院の外へ出て行った。 .
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加