トラブル

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その夜、月島は会社のシステムの再開、復旧に明け暮れ、帰宅は真夜中になった。 疲れた身体を引きずるように、部屋まで行く途中、ダイニングルームの灯りがついていることに気付く。 中に入って行くと、派手な格好をした、ユキがテーブルに突っ伏している。 近くに、水の入ったグラスが置いてあった。 月島「今、帰りか?」 ユキ「そうよ。ほっといて」 顔を上げずに、ユキは答えた。 ユキの手首には、新しい痣が出来ている。 月島「お前…、いい加減やめろよ」 ユキ「プライベートなことには、口出さない約束よ」 月島「いくら金になるっつったって、毎回痛い思いをしに行くなんて、おかしいだろ。 愛があるからってやつか?」 ユキは、鼻で笑う。 ユキ「愛?何それ? 形のない、見えないものってやつ? …見えなくて、形もないんだから、ないんじゃない?そんなもん」 月島は、突っ伏しているユキを見ながら、隣の椅子に座る。 月島「ものは試しで聞いてみるが…どうしたら、やめるんだ?」 ユキ「何を?」 月島「自分を傷付けること」 ユキ「…傷付いてなんかないし。これは、私のサイドビジネスなの」 月島「認めない」 ユキ「あんたの許可なんか、必要ない」 月島「どんな相手なんだ?」 ユキ「また殴りに行く気?」 ユキは、ようやく顔を上げて、立ち上がる。 ユキ「とにかく、私のビジネスの邪魔しないで。 月島家に仕える者として問題があるなら、クビにすればいいじゃない」 ユキはドアの方へ歩く。 月島「クビにしたら、収入がなくなるぞ」 ユキは、ドアを開けて止まると、振り返らずに答えた。 ユキ「だとしても、きっと、どうにかなるわ。 今まで、そうやって来たんだから」 そして、ドアから出て行った。 月島は、ユキの出て行ったドアをしばらく見つめていた。 .
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