続編

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病院の入口を一歩出ると、家を出る時に降っていた雪は、驚くほど積もっていた。 琉生は、誰の足跡もない白い雪の上を一歩、二歩と歩く。 ユキ。 お前を追って行った、北海道でも、こんな雪だったな。 あの時 お前は、俺から離れようと必死で 俺は、お前を連れ戻すのに必死だった。 想いは同じだったのに。 琉生「ユキ…」 琉生の耳に、ユキの声が響く。 陣痛に耐えながら… 「だって…、もう少しで会える。 琉生と私の赤ちゃんを、抱き締められる。 それを思ったら、こんな痛みなど…」 涙ぐみながら… 「ちゃんと、産んであげたいのに…」 涙をこぼしながら… 「赤ちゃん…、会いたくないのかな、こんなママじゃ…。 神様が会わせてくれないかもしれない… 悪いことばっか、してきたから…」 「琉生…、苦し…」 「諦めたくない… 赤ちゃんだけは、助けて… 私は、いっぱい生きたから、だから…」 「ずっとずっと、愛してるからね」 琉生は、雪の中に崩れるように膝をつく。 琉生「ユキ…っ!」 そして、額まで雪につき、両手で雪を掴んだ。 琉生「ユキ!!」 神様! お願いだ。 望むなら、全てを差し出す。 叶えてくれるなら、何でも捧げる。 だから だから ユキと赤ん坊を守ってくれ! 祈ることしか出来ない俺を嘲笑ってもいい! 頼む… 頼むから ユキと赤ん坊を…。 大事なんだ。 何よりも 誰よりも この命よりも 大事なんだ… 琉生は、積もったばかりの雪を何度も何度も叩いていた。 .
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