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酸素をされたユキは、弱々しく、琉生の手を握り返す。
ユキの目に涙が浮かぶ。
ユキ「赤ちゃん、は…?」
琉生「元気な赤ん坊だよ。
腹を空かせて、泣いてる」
ユキの目から涙が溢れた。
ユキ「良かった…。良かった…」
琉生「ユキ、お前のお陰だ。
俺は、祈ることしか出来なかったよ」
ユキ「ううん。傍にいてくれて、ありがとう」
そして、赤ちゃんを抱いた助産師が入って来る。
「さあさあ、お母さん。初仕事よ!」
ユキ「可愛い…」
ユキは助産師の手を借りながら、赤ちゃんに授乳する。
ユキ「琉生、見て。手がこんなに小さい」
琉生「足なんか、俺の手の半分もないぞ」
一生懸命に吸い付く赤ちゃんを二人は、いつまでも顔をくっつけて見ていた。
「さあ、今度は、お母さんが休む番ですよ。
もう夜が明けます。
ご家族の方はお帰り下さい」
助産師に促され、後ろ髪を引かれながら、待合室に戻る琉生。
蒼井は、あくびをしながら待っていた。
琉生「ユキが休むから、家族は帰れとさ」
蒼井「ん?
じゃあ、僕は家族じゃないから、いていいのかな?」
琉生「アホか。行くぞ」
琉生は蒼井の頭を叩く。
蒼井「いったいな~!この恩知らずめ!
恩を仇で返してると、友達なくすぞ~!」
琉生「お前は家族だろ」
蒼井「!?
へぇ!これは驚いた!
琉生も、そんな気のきくことが言えるようになったか~!」
琉生「なんだよ?」
二人は、言い合いながら、病院を後にした。
病院を出てから、琉生はユキのいた階を見上げる。
ユキ…
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