親睦会

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何だか、すごい時間をかけて、やっとメイク担当者が帰ったのは、6時前だった。 ユキが溜め息をつくと、またインターホンが鳴る。 ユキ「今度は誰?」 ユキが玄関を開けると、今度は男の人が立っていた。 「お迎えにあがりました」 ユキは、営業スマイルを向ける。 ユキ「今、準備をして参ります」 ユキは、用意されていた小物を持ち、靴を履き替えると、車に乗り込んだ。 長いリムジンの中は、ユキだけだった。 ホテルに着くと、リムジンのドアが開けられる。 紅い絨毯の先に、月島は立っていた。 ユキ「すっごい疲れた。 これも、ちゃんと特別手当を頂きますからね」 月島「身なりはパーフェクトなのに、中身はヒドイままか」 ユキ「今に始まったことじゃないわよ」 月島「確かに。 今日は、信頼を取り戻す会だ。素を出すなよ?」 月島は、ユキに向かって、手を差し出す。 月島「お手をどうぞ。お嬢様」 ユキ「あんたの手を握らなきゃならないくらいなら、私の手を切り落とした方がマシよ」 月島「言うこと聞かないと、特別手当、出さないぞ」 月島は、ユキの手を取った。 そこへ、ホテルのオーナーが挨拶に来る。 「月島様。 本日は、ご利用ありがとうございます。 当ホテル自慢のワインを始め、お食事も一流のもののみをあつらえました」 月島「さすがだな」 「こちらのお連れの方は…?」 そこへ、重役たちがやって来る。 「社長、お疲れ様です」 月島「あぁ、すまないな、時間外に」 「いえ、これで顧客の信用が少しでも取り戻せれば」 「あれ、隣の方は…」 ユキ「皆様、お疲れ様です」 「あ、メイドの!」 「メイド!?」 ホテルのオーナーも驚いている様子だった。 ユキ「ご主人様は、よほどお相手がいらっしゃらなかったようで」 月島「コイツが、こういう場に行ってみたいと言って聞かないから、仕方なくな」 ユキと月島は、微笑み合うが、目の奥では笑っていなかった。 その後、月島はユキと離れ、顧客や株主、子会社への挨拶回りに忙しなく動く。 ユキは、少し離れた場所から、その様子を見ていた。 .
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