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中へ戻ると、割れたシャンパングラスはきれいに片付けられ、何事もなかったようになっていた。
月島「お前は、もう俺の傍を離れるな」
ユキ「随分な、お目付け役ね」
月島「うるさい」
二人が、小声で言い合いをしていると、背後から声がかかる。
「ユキ?」
ユキと月島は振り返る。
そこには、恰幅のいい背広を着た、中年男性が立っていた。
見覚えがなく、月島はユキを見た。
ユキは一瞬、強ばった表情をしたのを、月島は見逃さなかった。
ユキは、営業スマイルを作っていた。
ユキ「社長~!
こんなところで会えるなんて、すごい偶然!」
社長「最近、会ってなかったからな」
ユキは、社長と話ながら、月島から離れる。
それと同時くらいに、社長はユキの耳元で囁いた。
社長「久々に、今夜あたりどうだ?」
月島「!?」
ユキ「え~、だって、社長ってば手加減ないからな~」
社長「今日は、そんなにキツく縛らないよ」
耳元で囁き合う二人。
月島「失礼」
社長は、月島を見る。
月島は、自分の名刺を渡す。
月島「私は、今日の主催の、こういう者です。
名刺を頂けますか?」
ユキは、月島を見る。
月島は、社長を真っ直ぐ見ていた。
「主催者?
ということは、月島財閥の?
これは、失礼しました。私は、こういう者です」
月島に向かって、名刺が差し出される。
月島は、それを受け取ろうとして、手を出す。
その瞬間、ユキは名刺を奪い取った。
ユキ「堅苦しい名刺交換なんて、いいじゃない」
月島「これは、ビジネスだ」
「いい子だから、返しなさい」
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