9/10

74人が本棚に入れています
本棚に追加
/207ページ
月島は、会社からの帰りを珍しく歩いていた。 普段、車でしか通らない道も新鮮に感じて、散歩がてら歩いていた。 ブランドショップから、アイスクリーム専門店と、軒を連ねる。 ユキと同年代くらいの女の子が多く、カフェやアクセサリーショップに多く見掛けた。 月島「たまには、外で飲んでみるか…」 月島は、テラスのカフェに入った。 通りに面した席で、行き交う人たちを見る。 月島「ん?」 月島は、その行き交う人たちの中に、メイド服にコートを羽織ったユキを見つける。 月島「ユキ!」 ユキは、月島に気付くと、テラス越しにやって来る。 ユキ「あんた、家に帰れば、もっといいコーヒーが飲めるのに、何でこんなとこで?」 月島「社会勉強だ」 ユキ「あっそ」 月島「病み上がりなのに、買い物か?」 ユキ「そうよ。従順なメイドをお持ちで良かったわね」 ユキは、両手に持った、ビニール袋を持ち直す。 ユキ「何時に帰って来るんだか知らないけど、じゃあね」 月島「休んでいけよ」 ユキ「休憩時間は決められておりますので」 月島「ご主人様に付き合え」 ユキ「それは命令?」 月島「そうだ」 ユキは、溜め息をつくと、カフェの中に入って来る。 そして、ホットココアをオーダーした。 月島「食材は家まで届けてもらうことになってたはずだが?」 ユキ「私の唯一の外出の機会よ。やめてもらったの」 月島「夜は、外出の機会が多いのにな」 ユキ「またその話?」 月島「まあいい。今日の夕食は?」 ユキ「またコースでしょ? あの分厚い本に書いてあったわ。 夕食はコースでって」 月島「あの汚い丼がいい」 ユキ「言葉を慎んで。あの絶品丼をなんてこと言うのよ」 月島「あれを食べるには、どうしたらいい?」 ユキ「簡単よ。私に五万払えばいいのよ」 月島「なるほど」 月島は、財布を出す。 月島「カードしかない」 ユキ「金持ちって、不便ね。残念」 ユキはココアを飲み干すと、立ち上がる。 ユキ「じゃ」 .
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加