ユキの秘密

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次の日。 ユキは、ナースステーションに顔を出す。 ユキ「あの…、兄は?」 「あぁ、ユキさん。こんにちは」 奥から師長が出てくる。 ユキ「兄が病室にいないんですが…」 師長「お兄さんは、個室に移られたんですよ」 ユキ「え?」 師長「ごめんなさいね、事後報告になっちゃって」 ユキ「あの、個室は個室代を払うのが…」 師長「病院の方針が変わってね、重症の方は個室代を払わなくても、個室に入れるようになったの。 医療費も、入院費も免除されることになったのよ。良かったわね」 師長は優しく微笑んだ。 ユキ「そんな…」 師長「お兄さんのところに、案内するわね。 こちらよ」 師長に付いて行き、ドアを開けると、広くてきれいな個室に呼吸器を付けた、ユキの兄が寝ていた。 ユキ「本当に?信じられない」 師長「今まで、ユキさん、たった一人で滞納もせずに、頑張って来たじゃないの。 毎日、面会にも来てね。 神様がちゃんと見ててくれたのかもね」 師長は、微笑みながら病室を後にした。 病室に残された、ユキと兄。 ユキは、兄の手を握る。 ユキ「お兄ちゃん…」 もう いいの? この身体を差し出さなくて いいの? お兄ちゃん。 ユキは、今まで自分がしてきたこと 兄との思い出 そして 何度も、やめろと言った月島 ホテルのドアを叩いた月島 自分を看病してくれた月島を思い出して 泣いた。 .
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