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その日、月島邸には珍しい客が来ていた。
蒼井「ユキちゃん、どう?」
月島の部屋で紅茶を飲みながら、蒼井は訊ねた。
月島「とんだ、じゃじゃ馬だ」
蒼井「だろうね」
蒼井は笑う。
月島「大体、理由も言わずに、『預かれ』は普通ないだろ」
蒼井「だって、仕方ないじゃ~ん。
うちだって、じゃじゃ馬はお断りだし?」
月島「お前のところで引き取る必要はないだろ?あいつは、駒沢家の使用人だろ?」
蒼井「駒沢邸には戻れないね」
月島「何故だ?」
蒼井「咲ちゃんとこの執事くんに手を出そうとして、執事くん、大怪我しちゃったからね」
月島「執事に?
何故だ?何のメリットがある?」
蒼井「メリット?
ただ、好きだから、手に入れたくなったんだろ?」
月島「あいつは、愛だの信頼だの、目に見えない、形なきものは信じない。
何かメリットがあったはずだ」
蒼井「そうかな?
全部バレた時、あの子は『翔さんの笑顔が欲しかった』って言ってたよ?」
月島「まさか」
蒼井「本気で好きだったんじゃないかな~、ユキちゃんは。
力づくで手に入れたいほど」
月島は、考える仕草をする。
そんな様子を蒼井は見ていた。
月島「ま、俺には関係のないことだ」
蒼井「でもさ~、お前変わったよな~」
月島は、蒼井を見る。
月島「何がだ?」
蒼井は回りを見渡す。
蒼井「ネコちゃんがいないし」
月島「呼べば、いくらでも寄って来る」
蒼井「でも、呼ばないんだろ?」
月島「忙しいだけだ」
蒼井「あ~、やだやだ。鈍感な男は魅力に欠けるね」
月島「何が言いたい?」
蒼井「別に~」
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