仲直りのクルージング

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翔さんの穏やかな笑顔 何があっても、動じない冷静さ ただひた向きに、咲さんを愛す とても、羨ましかった。 ユキは溜め息をつくと、お盆にミネラルウォーターを載せて、振り返る。 ユキ「わっ!ちょっと!危ないじゃない!」 すぐ傍に、月島がいて、ユキは驚く。 ユキ「厨房に何の用?飲み物なら、今持ってくわよ」 月島「…あいつと、キスしたかったか?」 ユキ「別に。キスなんか飽きるほどしてるわ」 月島「でも、あいつとはしてないだろ」 ユキ「しつこい。セクハラで訴えるわよ」 心穏やかじゃない。 俺に対しても、あんな紅い顔は見せたことがない。 見つめ合った二人の間に、本当に今まで何もなかったのか? 月島は、溜め息をつく。 ユキ「飲むの?飲まないの?」 月島「うるさい」 月島は、ユキからグラスを取ると、飲み干した。 その時、ユキの携帯が鳴る。 ユキは一瞬、表情を強ばらせたが、携帯に出る。 月島に背を向けて、少し離れた。 ユキ「はい。私です。 えっ…!?お兄ちゃんが!?」 月島「っ!?」 ユキを見ると、顔を青くして、立っているのがやっとだった。 相手の話も耳に入っていないようだ。 月島「ユキ、しっかりしろ。 ここに座れ。 電話は俺が話す」 ユキは座りながらも、携帯を握って離さない。 ユキ「あんたは、何も知らないでしょ!」 月島「知ってる! 俺に隠し事が通用すると思ってんのか」 月島は、ユキの携帯を奪い取ると話す。 月島「月島です」 突然、重症な不整脈が起きた。 抗不整脈剤も使用したが、治まらない。 今、心臓マッサージをしている。 一刻も早く来て欲しい。 電話の相手は、そう言った。 .
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