別れ

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病室のソファの上に、ユキを後ろから抱きしめたまま座る。 目の前には、呼吸器に繋がれた、ユキの兄。 モニターからは、心臓が止まってしまったことを告げる警告音が鳴りっぱなしになっている。 ユキは、ただただ、その光景を見ていた。 月島は、ユキを抱きしめ続けた。 ユキ「ねぇ…」 月島「ん?」 ユキ「お兄ちゃん…、死んじゃったの?」 月島は、目を伏せながら、ユキを強く抱きしめる。 月島「そうだ」 ユキは、月島の腕から出て、兄の手を握る。 ユキ「お兄ちゃん。 一人は寂しいでしょ? 私も一緒に逝ってあげるよ。 そうすれば、私もお兄ちゃんも寂しく…」 月島「させるか」 月島は、ユキを再び抱きしめる。 月島「目を覚ませ。 ユキ、お前は生きてる。一人なんかじゃない」 ユキ「一人だよ」 月島「俺がいる」 ユキは答えない。 月島「お前と俺で送り出してやるんだ。 一緒に逝くことよりも、いつまでも忘れずにいて、一緒に生きることを選ぶんだ」 ユキ「無理…。耐えられない」 月島「耐えられるさ。お前は強い」 ユキの目から再び涙が溢れる。 そして、医師、看護師が来て、ユキの兄の死亡確認が行われた。 看護師「ご遺体は、どうしますか?」 ユキ「…葬儀も、お墓もしてあげれないから…」 月島「うちに運んでくれ」 ユキ「でも」 月島「お前の家族は、俺の家族も同然だ。 葬儀も墓も、うちがやる」 ユキ「いいの?」 月島「あぁ」 ユキ「…ありがと」 月島は優しく笑う。 月島「お前、初めて俺にお礼を言ったな」 ユキ「だって…」 ユキの目から涙は止まらなかった。 .
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