序章

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月島は、ハーブティーを飲み終え、新聞に目を通していた。 新聞から顔を上げて、回りを見渡す。 月島「メガネ…。書斎か」 月島は書斎へと向かう。 書斎の机の上に、メガネはあった。 月島がメガネをかけた時、廊下の方から、違う部屋のドアの閉まる音がする。 月島「こんな時間に…?」 書斎のドアから顔だけ覗かせて、廊下を見ると、ユキが出て来た。 メイド服からは想像もつかない露出の多い服で、色も派手だった。 ユキは、月島に気付かないまま、静かな足取りで玄関へと向かう。 月島「こんな夜中に、どこに行く?」 ユキは立ち止まり、振り返った。 月島「早くも逃げ出したくなったか?」 月島は、ユキの行く手を遮るように、ユキの前に立つ。 ユキ「バカにしないで。明日の朝には戻るわ」 月島「どこに行く?」 ユキは、溜め息をつく。 ユキ「あんたが出した条件、飲んであげる。 その代わり、私のプライベートには口を出さないで」 月島「交換条件か」 ユキ「そんなとこ」 月島「いいだろう。 口は出さない。でも、どこに行くかくらいは聞いても違反にはならないだろ?」 ユキは、しばらく黙っていたが顔を上げると、開き直った表情で答える。 ユキ「身体を売りに行くのよ」 月島は、表情を崩さず、ユキを見る。 ユキ「売春女が、そんなに珍しい? そんなことはないでしょ。 あんただって、金出して、女を抱いたことくらいあるはずよ」 ユキは鼻で笑うと、玄関に向かうため、月島の前を横切った。 ユキ「!」 月島は、ユキの腕を掴んでいた。 月島「何故、そんなに金が欲しい?」 ユキ「この世の中、金が全てでしょ? 莫大な金がなきゃ、生きることだって出来ない人もいるの」 二人は見つめ合う。 ユキ「離して。 客が待ってるの。今日の客は金になるんだから」 ユキは、月島の手を振り払うと、玄関へ消えて行った。 .
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