別れ

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ユキは、ハンモックに乗ったまま、丼を食べ始める。 月島「ハンモックの上で、あぐらをかいて、飯を食うなんて、器用なことすんな」 感心する月島をユキは鼻で笑う。 ユキ「この丼、いくら? 前代未聞なんでしょ?高くつきそうね」 月島「タダでくれてやる。 俺は、お前と違って、金には困ってない」 言ってしまってから、月島は自分の無神経な言葉に気付く。 ユキの目から涙が溢れる。 月島「すまん」 月島は慌てて、ユキの涙を手で拭う。 月島「そういうつもりじゃなかったんだ…」 ユキの顔を覗き込もうとすると、ユキの笑い声が聞こえた。 ユキ「女の涙ごときに騙されてたら、あんた、いつか痛い思いするよ」 いつもなら… いつもなら、こうして、ユキに一本取られる度に、イライラしていた。 けど、今は 今は、ユキの涙が止まらなくて 顔は笑ってるのに、ユキの涙が止まらなくて ユキを傷付けた自分の言葉に イラつく。 月島「笑うな」 ユキ「可笑しくて、泣ける!」 月島は、ユキを抱きしめた。 月島「どうしたら、お前の傷を癒すことが出来る? 俺に何が出来るんだ?教えてくれないか?」 ユキ「あんたに出来ること…あるよ」 ユキは、月島の腕の中で、目を伏せた。 ユキ「私を離すこと」 月島「?」 ユキは、月島を突き飛ばす。 ユキ「丼が食べれないでしょ!」 ユキは笑いながら、丼を食べる。 ユキ「あんたには…感謝してる」 月島「え?」 ユキ「兄を自分の家族同然だって言ってくれて。 私たちには、家族いないから」 ユキは、丼の手を休める。 ユキ「だから、感謝してる」 月島「ユキ…」 こうして、近付いていく。 身体に、心に傷を追った、お前と。 メイドとして、働く時は敬語で、距離がある。 でも、ここに来て、ハンモックに揺られてるユキとは近付ける。 もしかしたら、俺は… そんな時間を大切にしてるのかもしれない。 .
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