繋がらなかった想い

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月島は、迎えに来た車の後部座席に乗り込むと、溜め息をつく。 月島「何で、お前が来る?」 執事「やはり、ユキの方がよろしいですか?」 月島「別に」 執事「お買い求めの物があると伺っておりますが?」 月島「今日はいい」 執事「かしこまりました」 月島「ユキはどうした?」 執事「夕方から、暇を」 月島「何故だ?」 執事「人と会う予定があるとか」 月島「人?誰だ?」 執事「そこまでは…」 月島「まさか…な」 月島は、腕時計を見る。 あの男と、今までこんな早い時間に会うことはなかったからな。 でも、何だか胸騒ぎがする。 胸騒ぎ? 月島は鼻で笑う。 一体、いつから、そんな根拠のないものを信じ始めた? バカな。 気のせいだ。 月島は、車の後部座席に寄り掛かると、流れる街の風景を見た。 本当は ユキとお茶でもしようかと思っていた。 アイツが何に興味を引かれるのか知るのも悪くはないと思って、店を見て回ろうかと。 そうすれば 離れたり、近付いたりしないで、一緒にいられるんだろう? ここまで、ただのメイドを気にしてやる雇い主も珍しいだろう。 バカな子ほど可愛いというのは、こういうことか。 .
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