序章

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翌朝。 月島がダイニングルームに行くと、ユキがメイド服で朝食のセッティングをしていた。 月島「昨夜は楽しめたか?」 一瞬、手を止めたユキだったが、作った笑顔で答える。 ユキ「おかげさまで、約束のお時間に少し遅れてしまったので、相手方のご機嫌を損ねてしまいました」 月島「それは残念だったな」 ユキ「ご心配なく。その後の私のサービス次第とのことだったので、精一杯、尽くしましたから」 食器を並べるユキの両手首には、痣がある。 月島「その痣は?」 ユキ「お客様には、様々なご趣味をお持ちの方がいらっしゃいますので」 月島「なるほど。言いなりって訳か」 ユキ「ご主人様。朝食には今しばらくかかります。 お部屋でお休み下さい」 笑顔を向けるユキを見ながら、月島は無言で立ち上がると、自分の部屋に戻る。 朝食後、月島は自分の部屋で仕事を始める。 ふと窓の外を見ると、ユキが出掛けて行く姿を見掛ける。 月島は時計を見る。 まだ10時だった。 ユキの服装は派手ではない。 長いボアのついたコートを着ていた。 まぁ、中は何を着ているのか分からないが。 月島は、執事を呼ぶ。 執事「お呼びでしょうか、ご主人様」 月島「ユキが出掛けた。後を付けろ」 執事「ユキは買い物に出掛けました」 月島「いいから、付けろ」 執事「かしこまりました」 執事は、部屋を後にする。 こんな真っ昼間に、客はいないだろう… 副業するにしては、時間がない。 一体、どこへ… 考え過ぎか。 昼の支度もしなきゃならないし、本当に、ただの買い物かもしれない。 月島は自嘲する。 預かりモノとはいえ、何故、俺がこんなに気にしなきゃならない? 馬鹿馬鹿しい。 月島は、仕事に戻る。 しばらくすると、机の上の電話がなる。 ユキの後を付けに出した執事からだった。 月島「何だ?」 執事「申し訳ありません、ご主人様。 ユキを見失いました」 月島「見失った?」 .
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