繋がらなかった想い

4/9
前へ
/207ページ
次へ
車窓から、流れる街の風景を見ていると、見慣れた姿を見た気がして、月島は急いで振り返る。 月島「停めてくれ!」 車は、路肩に停まる。 執事「いかがなさいましたか?」 月島「あいつ!」 月島は車から降りると、執事に言った。 月島「帰っててくれ。必要があれば、また呼ぶ」 月島は、街の雑踏に消えた。 見間違えなんかじゃない。 確かに今、ユキを見た。 あの男と一緒だった。 派手な服じゃなかった。 嫌な予感がする!! 月島はユキを見掛けた方へ走った。 いつものホテルの方向だった。 月島は、ホテルのラウンジに駆け込む。 周りを見渡すと、ラウンジにあるテーブルとソファのところに二人はいた。 座って何やら話をしている。 遠目に見ても、ユキの表情は冴えない。 月島は、つかつかとユキの元へ行く。 月島「ユキ」 ユキ「!!」 月島「帰るぞ」 月島はユキの腕を掴む。 ユキ「ちょっと!」 社長「またアンタか。 いっつも邪魔すんのは、アンタだな」 月島「誰にものを言ってる?」 月島はユキから手を離すと、社長の胸ぐらを掴んだ。 月島「黙って消えればいいものを!」 社長は胸ぐらを掴まれたまま、勝ち誇ったように、ユキを見て言った。 社長「いいのか?」 ユキ「やめて!」 ユキは、月島の腕を社長の胸ぐらから振り払う。 そして、社長を庇うようにして、月島の前に立った。 月島「ユキ?」 ユキ「この人に触れないで!」 月島は怒ったように拳を握る。 月島「何故だ!?そこをどけ!」 ユキは涙目になりながら、社長に抱き付く。 ユキ「社長を…愛してるの」 月島は、目を見開く。 ユキ「だから、社長を傷付けないで!」 月島の拳が力を失い、形を崩す。 そして、しばらくの沈黙の後、哀しい目をして、月島は口を開いた。 月島「ユキ。お前は…クビだ。 二度と俺の前に現れるな」 .
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加