ユキを求めて

3/11
前へ
/207ページ
次へ
ユキの使っていた部屋は、何も荷物が残っていなかった。 ユキのお気に入りのハンモックもない。 月島は、部屋から出て、執務室に断りもなく入る。 執事「ご主人様!? このような場所に、いかがなさいました!?」 月島「ユキの荷物は!?」 執事「ユキが取りに来ました」 月島「!?」 月島は、驚いて言葉を失う。 執事「あの…?」 月島「いつだ…?」 執事「昨夜、遅くに…」 月島「何故、俺に言わなかった!?」 月島は、執事の胸ぐらを掴む。 蒼井「やめなよ」 蒼井は、月島の腕を掴んだ。 執事「ユキが、自分でご主人様にご挨拶に行くと…。 昨夜、ユキが部屋に来ませんでしたか?」 月島は、執事の言葉を聞いて、愕然とする。 月島「あれは、夢じゃ…」 月島は自分の額に手を当てる。 蒼井は、月島の肩を叩く。 蒼井「安心しなよ。 必ず、見付けてみせるさ」 蒼井と月島は、ユキが使っていた部屋に戻る。 月島「昨日、ここに…」 月島は、ユキの温もりが残っているような気がして、机に触れる。 蒼井は引き出しを開けた。 蒼井「あれ? もう~、危ないなぁ。誰かに盗られちゃうよ?」 蒼井は引き出しから、紙切れを出した。 月島「小切手…」 それは、あの日、ユキを倍額で買うと言って、手渡した小切手だった。 他のものは何もなく、それだけあるところを見ると、置いてったのだろう。 あの夜のことは、なかったことに。ってわけか。 給料はやっていたが、この小切手なしで、ちゃんと生活出来てるのか… 蒼井「何か、近くにいそうな気がする…」 月島「ユキを気に入ってた、社長のとこかもしれないんだ」 蒼井「誰それ?」 月島「分からん。顔は分かるが、名刺をもらいそびれた」 蒼井「もらいそびれた?会ったってこと?」 月島「あぁ、パーティーでな」 蒼井「社長、み~っけ!」 蒼井は、何もしていないのに、勝ち誇ったように笑った。 蒼井「パーティーの参加者名簿を見ればいいんじゃん。 しかもお前、顔分かるんだろ? パーティーの主催、どこ?」 月島「ウチだ!」 .
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加