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執事「はい。申し訳ありません」
月島「お前、腕が落ちたか?」
執事「いえ。いつものように付いていたのですが…」
月島「気付かれたのか?」
執事「はい。恐らく」
月島は考える。
後を付けさせたことは何度もある。
探偵並みの追跡能力はあるはずだ。
にも関わらず、まかれたとなると…
月島「やはり、馬鹿ではないらしい」
執事「は?」
月島「もういい。戻れ」
執事「はい」
月島は電話をかける。
- おかけになった電話は現在、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないため…-
月島「ちっ」
それから、月島は仕事に手が付かなくなる。
しばらくして、執事が戻って来る。
月島「どこで見失った?」
執事「始めは言い付けた場所で食材の買い出しをしていたのですが、その後です。
ユキを見失ったあたりは、ショッピングモールや、総合病院、高層マンション、オフィスビルが建ち並ぶ場所でした」
月島「どこに入ったか、検討もつかないのか?」
執事「申し訳ありません」
月島は溜め息をつきながら、足を組んで、椅子の背にもたれ掛かる。
月島「分かった。下がれ」
執事が頭を下げ、部屋を後にしようとした時、ドアをノックする音が響く。
月島と執事の目が合う。
月島「誰だ?」
ユキ「失礼します」
ドアから、涼しげな表情のユキがティーセットを持って、入って来る。
ユキ「お茶をお持ちしました」
ティーセットを持って、月島の近くへ行くユキは、執事の前を通る。
ユキ「どこかに、お出掛けだったの?」
ユキは、そう言って鼻で笑うと、執事の前を通り過ぎる。
月島「出掛けてたのは、お前の方だ。
どこ行ってた?」
ユキ「私は、この執事に頼まれて、食材の買い出しに」
月島「その後だ」
ユキ「私のような者に、他に行く場所など
あるはずもありません。
まっすぐ、帰って参りました」
月島「なるほど」
ユキは紅茶をセッティングしていく。
ユキ「昼食の準備が整いましたら、またお声かけ致します」
月島「ああ」
ユキは一礼すると、部屋を出て行く。
月島「さすが…とでも言うべきか」
月島は紅茶に口を付けた。
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