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蒼井「海外じゃなかったねぇ」
月島も、パソコンを覗く。
月島「北海道!?」
蒼井「うん、そうみたいだね」
月島「何で…」
蒼井「さあ」
月島「北海道のどこに…」
蒼井「雪月花」
月島「雪月花?」
蒼井「旅館の名前。そこで住み込みで仲居をしてるみたいだね」
月島「北海道の雪月花だな。分かった」
コートを掴んで立ち上がる月島に、蒼井は唖然とする。
蒼井「まさか、この足で行くの!?」
月島「当たり前だ」
蒼井「仕事は!?」
月島「連絡はつく。俺一人くらいいなくたって、大丈夫だ」
蒼井「お前…、すごいな」
月島「もう見失いたくないんだ。
お前だって、俺の立場なら同じことするさ」
蒼井「ん~…」
考える仕草をする蒼井。
そして、満面の笑みで答える。
蒼井「そうだね」
月島は、蒼井邸を飛び出した。
荷物も持たず、飛行機のチケットだけ空港に向かう車の中で手配する。
空港までの道のり…
車の後部座席に身体を沈めながら、月島は目を閉じる。
見えるのは…
ユキの笑顔
ユキの怒った顔
ユキが時々見せる、悲しい瞳
ハンモックに揺られながら、空を見つめる瞳
勝ち誇ったように、鼻で笑った顔
こんなに愛してるのに、
こんなに求めてるのに、
どうにもならない。
ユキに会ったら、何を言えば…
もしかして、もうユキに相手がいたら…
二度と、俺の前に現れるなと言ったのは、自分なのに。
月島は、目を閉じたまま、眉間に皺を寄せながら、溜め息をついた。
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