北海道 ~2人の想い ~

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仲居の仕事を終えた0時過ぎ。 ユキは、寮までの道を歩く。 雪は止んで、白い風景を月明かりが碧く照らす。 ユキは、夜空を仰ぐ。 自分の吐く息に、月が霞む。 空気が済んで、キレイな夜。 こんな夜はハンモックに揺られて… ユキは、自嘲する。 ハンモックに揺られる自分を思い浮かべた隣に… 月島がいた。 もう会うこともないはずなのに… ユキは足を停める。 少し先の外灯の下に、誰かいる。 誰…? ていうか… その人影は、ユキに近付いて来る。 そんなはずない。 こんな夢を見せないで。 お願い。 嘘だと言って。 他人のそら似って… そんなはずないのに… 月島「…ユキ」 ユキ「…何で?」 月島「やっと会えた」 ユキ「何で…」 月島「やっと探しあてた」 ユキは、涙を貯めながら、言う。 ユキ「な、何しに来たの?」 月島「お前を迎えに来たんだ」 ユキは、震える胸を隠しながら、平然を装う。 ユキ「ば、馬鹿言わないで。 クビにしたのは、そっちなのよ? 新しい生活にも慣れてきたところなのに」 月島「それでも、迎えに来たんだ」 月島は、ユキの前に立つ。 ユキ「やめてよ…」 月島は、今にも泣き出しそうなユキを 抱き締めた。 .
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