北海道 ~2人の想い ~

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男がユキに向かって、ナイフを振りかざす。 男「ん?」 男の足を月島が這いつくばったまま、掴んでいた。 痛みに顔をしかめながら、男を押さえようとする。 力を入れるたびに、脇腹から流れる血液は増える。 月島「させない」 ユキ「やめて! 琉生は、大神奏じゃないわ!」 男「嘘をつくな! 空港から付けてたんだぞ! 手下を二人連れてた!」 ユキ「知らない!」 男は、月島の脇腹を足で踏みつける。 月島「くっ…!」 ユキ「やめてってば!」 その時、鋭く光るものが目の前を走った。 男「ぎゃあああ!」 男は倒れ、のたうち回る。 新たな血液が雪を汚す。 ユキが顔を上げると、そこには息をきらした奏と、刀を手にした榊が立っていた。 榊の手にする刀の先端からは、血液が垂れている。 奏「月島!大丈夫か!?」 榊「傷が深いです」 月島の意識は薄れていく。 ユキ「琉生!」 ユキは、月島の両頬を手で包む。 月島「ユキ…、良かった… 無事、で…」 ユキ「無事だよ!無事だから… 無事だから!だから、やだ!!」 「バカ野郎!!」 声のする方を見ると、男が増えていて、榊に切られた男を殴っている。 「てめぇ!一般人を巻き込みやがって!」 殴っていた男は、月島の傷を見る。 「ヤバい。俺たちの病院に連れて行く」 男は、奏に頭を下げる。 「詫びは、後で入れさせてもらう。 今は、とにかく病院に」 奏「そうだな」 後から来た男と、榊で月島を抱える。 月島「ユ、キ…」 ユキ「何?」 差し出された手を、ユキは握る。 月島「返事…聞かせ、て…くれない、か? このまま、じゃ…、死ねない」 ユキは、月島の手を握り直す。 ユキ「…なら、言わない。 私の返事聞きたかったら、戻って来て」 月島「お前…」 月島は、少し呆れたように微笑んでから、意識を手放した。 .
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