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月島の傷は深く、臓器まで達していて、即手術となった。
月島が眠っている間、北海道のヤクザから、奏に詫びが入り、月島を刺した男は行方知れず。
何より大変だったのは、奏の家に
「奏が刺された」
という誤報が入り、妻の「りお」の取り乱しようは大変だった。
奏が直接、りおと話し、ようやく落ち着いたらしい。
一方、
月島の手術は大手術だったが、翌日には目が覚めていた。
そして、手術3日後には、酸素も外れた。
月島「…ユキは?どうしてる?」
月島の手術が終わって目が覚めた時、ユキは、月島の傍にいなかった。
それどころか、1度も見舞いに来ない。
病室のドアがノックされるたび、期待を胸に返事をするのだが、入って来るのは、医療関係者か、奏や榊だった。
奏「…仲居の仕事が忙しいらしい」
月島「…そうか」
榊「忙しいとは言っても、お休みの日はあるでしょうから、次の休みには来るんじゃないですか?」
月島「…そうだな」
まだ抜糸が済んでいない月島は、身体の向きを変えるだけで、顔をしかめる。
榊「若、そろそろ行きましょうか?」
奏「そうだな。
あまり無理すんなよ。
くれぐれも、病院、抜け出すんじゃねぇぞ」
月島「分かってる」
そして、奏と榊は病院を後にした。
旅館に戻り、露天風呂からの帰りの廊下で、奏は仲居姿のユキを見かけた。
廊下の突き当たりの窓から、外を眺めている。
奏は、ユキの隣に立つ。
そこからは、月島の入院する病院が見えた。
ユキは、奏に気付くと、軽くお辞儀をして背を向けた。
奏「何で、アイツの所に行ってやらない?」
ユキは、足を止める。
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