北海道 ~2人の想い ~

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ユキ「忙しいもので」 奏「嘘だな」 ユキ「…」 奏「アイツのこと、何とも思ってないなら、とっとと振ってやってくんねぇか? アイツは、お前を待ってる」 ユキ「…待たれる資格など」 奏「アイツのこと、どう思ってる?」 ユキ「どうって… 私が、琉生のことを好きだと言って、何になるの? 琉生には…私は汚れ過ぎてて…」 ユキは、言葉を詰まらせる。 奏「アイツを避ける理由はそれか」 ユキ「会ったら、きっと…止められない。 琉生が欲しくなる。 会わなくても、琉生のことばっかなのに… 一生懸命、言い聞かせてるのに… お気持ちは嬉しいですが、大神様。私たちのことは、どうか、ほっといて下さい」 ユキは、奏にお辞儀をすると、足早に去った。 翌日。 月島の病室で、奏は切り出す。 奏「お前、退院しろ」 榊「若?」 奏「医者の話じゃ、あとは抜糸を待つだけじゃねぇか。 退院して、ユキのいる旅館で療生しろ」 榊「しかし、若、」 月島「俺も思ってたんだ。 ただ、自信がなくて、な。 奏に、そう言って背中を押してもらって良かったのかもしれない」 奏「女将には話をつけてある」 月島「分かった。 俺、ユキと一緒に過ごしたい。 ユキに会いたいんだ」 奏「分かってるさ」 その後、主治医から注意事項を聞き、2週間後に抜糸に来ることを約束して、月島は奏と榊に支えられながら、退院した。 一方、旅館では… 女将「ユキちゃん」 ユキ「はい」 女将「これから、療生のために、お客様が見えるの。 2週間くらいの滞在になるそうなんだけど、ユキちゃん、メイドさんの経験もあるし、その方の専属で、お世話係になって欲しいの。 頼めるかしら?」 ユキ「でも、専属となると、他の仕事が…」 女将「何とか、みんなで回せそうだから、大丈夫よ」 ユキ「分かりました」 .
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