北海道 ~2人の想い ~

9/9
前へ
/207ページ
次へ
ユキの働く旅館は、主に和室中心だが、海外からのお客様用に、洋室もある。 ユキは、身だしなみのチェックをしてから、洋室のスイートルームにノックをして入る。 そして、寝室の襖から声をかけた。 ユキ「失礼いたします」 ユキは、襖を開けて、正座のまま、両手をついて頭を下げる。 ユキ「本日は、当旅館をご利用頂きまして、ありがとうございます」 顔を上げたユキは止まる。 月島「ユキ」 ユキ「…え…?何で…」 月島「何でって、お前はそればっかだな」 ユキ「病院は?」 月島「ちゃんと医者の許可をもらって、退院してきた。 2週間後に抜糸だ」 穏やかで優しい月島の視線から逃げるように、ユキは立つ。 ユキ「お茶をお淹れ致します」 淡々と、お茶を準備しているが、ユキの胸は早鐘が鳴り響いていた。 見ては駄目。 あの瞳に捕らえられてしまったら、きっと… きっと… 触れたくなる。 触れて欲しくなる。 押さえきれなくなる。 好きだから… 大好きだから… でも、 でも、 元気そうで良かった。 .
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加