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ユキの働く旅館は、主に和室中心だが、海外からのお客様用に、洋室もある。
ユキは、身だしなみのチェックをしてから、洋室のスイートルームにノックをして入る。
そして、寝室の襖から声をかけた。
ユキ「失礼いたします」
ユキは、襖を開けて、正座のまま、両手をついて頭を下げる。
ユキ「本日は、当旅館をご利用頂きまして、ありがとうございます」
顔を上げたユキは止まる。
月島「ユキ」
ユキ「…え…?何で…」
月島「何でって、お前はそればっかだな」
ユキ「病院は?」
月島「ちゃんと医者の許可をもらって、退院してきた。
2週間後に抜糸だ」
穏やかで優しい月島の視線から逃げるように、ユキは立つ。
ユキ「お茶をお淹れ致します」
淡々と、お茶を準備しているが、ユキの胸は早鐘が鳴り響いていた。
見ては駄目。
あの瞳に捕らえられてしまったら、きっと…
きっと…
触れたくなる。
触れて欲しくなる。
押さえきれなくなる。
好きだから…
大好きだから…
でも、
でも、
元気そうで良かった。
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